介護の法定研修に対応したeラーニングとは|義務化研修・受講記録・LMS選びを解説
本記事は、介護の法定研修において自事業所の研修をeラーニングで実施し、受講記録を管理するシステムの選び方を解説します。介護の法定研修を行ううえでどの部分をオンライン化するか、どのように受講記録を電子化するかなど、法定研修の運営ポイントを整理しましょう。介護の法定研修では、実地指導(運営指導)・監査に備えて「誰が・いつ・適切に受講したか」という記録を残すことが重要なのです。多拠点やシフト(日勤/夜勤)、訪問介護事業や外国人材などに対応しつつ、正しく円滑に法定研修を行う必要があります。
なお、病院など医療機関の法定研修は医療法・施設基準に沿った進め方、建設・製造の安全衛生教育は安全衛生教育に沿った進め方が根拠となります。介護保険法とは運用ルールが異なるため、医療・建設・製造分野の方はリンク先をご覧ください。
※本記事の法令・告示・運営基準・報酬改定の記述は執筆時点(2026年7月)の内容です。制度は改正され得るため、実際の運用にあたっては厚生労働省および所管の都道府県・市町村の一次情報で必ず再確認してください。

この記事でわかること
- 認知症介護基礎研修・虐待防止・身体拘束適正化・BCP・感染症対策といった義務化研修は、座学部分をeラーニングで実施できる
- 鍵は「実地指導・運営指導に耐える受講記録が残るか」——記録の電子化が最重要。研修の未実施は運営基準減算に直結する
- 多拠点・シフト・訪問・外国人介護職まで、自事業所の研修を配信し記録を残す基盤の選び方
1. 介護・福祉事業者に義務づけられた法定研修
まずは、自事業所が「やらなければならない」研修を棚卸ししましょう。介護の研修義務は、各サービスの運営基準(厚生労働省令・告示)に定められています。2021年度(令和3年度)の介護報酬改定では、複数の研修・体制整備が義務化されました。その多くに3年間の経過措置が設けられましたが、その経過措置期間は2024年(令和6年)3月末で終了しています。そのため、現在は「まだ準備中」が通用しません。ここでは、代表的な法定研修を整理します。
1-1. 認知症介護基礎研修
認知症介護基礎研修は、無資格で直接介護に携わる職員全員に受講が義務づけられた研修です。
認知症の方のケアに必要な基礎知識や技術、認知症の方と接するうえで大切な考え方などを体系的に学べます。研修を通して、入所者への正しい理解や尊厳を守った介護を行えるようになるでしょう。
新たに入職した対象者は入職後1年以内に受講する必要があり、2024年4月からは完全義務化されました。一般的に都道府県・指定機関のeラーニングで受講・修了されます。
参照
・厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」
1-2. 高齢者虐待防止
介護・福祉業界の全サービスには、虐待防止措置が義務化されています。定められた措置は以下の4つであり、そのなかに研修の実施も含まれているのです。
- 虐待防止委員会の定期開催
- 指針の整備
- 年1回以上の研修実施
- 担当者の設置
高齢者虐待防止研修では、利用者の尊厳を守るために虐待の定義や虐待に該当する行為などを学びます。研修の年間実施回数は1回または2回が義務化されており、サービスによって必要な回数が定められています。
参照
・厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」
・厚生労働省老健局高齢者支援課「高齢者虐待防止措置未実施減算、身体拘束廃止未実施減算の取扱いに係る Q&Aの周知について」
1-3. 身体拘束等の適正化
介護の現場で行われる身体拘束などの措置については、令和7年4月1日から短期入所・多機能系介護サービスに対して適正化に向けた以下の措置が義務化されています。
- 実施する場合、入所者の態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録する
- 委員会の開催(施設サービスは3ヵ月に1回以上)
- 指針の整備
- 研修の実施(施設サービスは年2回以上および新規採用時)
令和6年度の高齢者虐待防止法に基づく調査の分析結果によると、養介護施設従事者等による虐待の要因には、「職員の虐待や権利擁護、身体拘束に関する知識・意識の不足」や「職員の倫理観・理念の欠如」などの回答が多く挙げられました。
この結果からも、正しい知識の習得がトラブルの防止につながることが分かります。
参照
・e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十七号) 指定短期入所生活介護の取扱方針第百二十八条」
・厚生労働省「令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」」
1-4. BCP(業務継続計画)
介護事業者には、感染症の拡大や災害の発生が起こっても、継続して介護サービスを提供することが求められます。
そこで、全介護サービス事業者に、感染症・自然災害に備えたBCP(行動計画)の策定と、それに基づく研修・訓練(シミュレーション)が義務づけられました。この研修では、万が一の時にも継続して介護を行うために、事前準備をしたり有事の際の行動・対応を決めたりします。
経過措置は原則2024年3月末で終了しており、訪問系サービス等の一部に猶予されていた期間も2025年3月末までとなっています。
参照
・厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」
・e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十七号) 業務継続計画の策定等第三十条の二」
1-5. 感染症対策
介護事業者には、感染対策委員会の開催(6ヶ月に1回以上)、指針の整備、そして研修と訓練が求められます。研修では感染症の基本的な知識や対策を学び、訓練では環境整備や感染者が発生した際の対応をシミュレーションします。
知識を付与する研修(座学)はオンラインと相性が良く、発生時対応を体で覚える訓練(シミュレーション)は集合・実地で残すのが基本です。「研修」と「訓練」の切り分けは、法定研修をeラーニングで行うかどうかの線引きに直結するでしょう。
参照
・厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」
・e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十七号) 衛生管理等第百四条」
2. 法定研修未実施のリスク|運営基準減算と指定取消
介護分野では、罰則よりも「介護報酬の減算」が事業に大きな影響を与えます。2024年度(令和6年度)改定では、研修・体制整備の未実施に対する減算が新設・拡大されました。実際に事故や虐待が起きていなくても、措置が講じられていなければ減算の対象になる点に注意が必要です。
| 減算の種類 | 減算の概要 |
|---|---|
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 定められた4つの措置のいずれかが未実施で所定単位数の1%を減算(虐待が起きていなくても対象) |
| 身体拘束廃止未実施減算 | 措置未実施で最低3ヵ月の減算。 利用者又は入所者全員について所定単位数から10%に相当する単位数を減算 |
| 業務継続計画未策定減算 | BCP未策定で基本報酬を減算(施設・居住系は3%、その他は1%) |
減算は利用者数 × 日数 × 適用期間で積み上がるため、大きな経営インパクトを与えます。さらに、重大・悪質な運営基準違反が是正されない場合は、指定の効力停止や取消に至ることもあるのです。
つまり「研修をやっていない」「記録がない」状態は、単なる書類不備ではなく報酬減算の直接の根拠になり得るということです。だからこそ、「記録をどう残すか」が実務の核心になります。
参照
・厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」
・厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1 (令和3年3月31日)」
・厚生労働省老健局総務課介護保険指導室「介護保険施設等 運営指導マニュアル」
3. 法定研修をeラーニングで実施するかどうかの判断と線引き
介護事業者に義務化された研修をeラーニングで済ませて良いのかどうかは、多くの担当者が抱く不安といえます。結論、座学中心の研修はeラーニング形式で実施することが可能です。ただし「動画を配信して終わり」ではなく、本人が受講した事実を記録に残せることが前提の運営となります。この線引きを具体的に確認しましょう。
3-1. 座学と実技/演習の切り分け
全ての法定研修をオンラインに置き換えることは不可能といえます。
知識を身につける座学はeラーニングと相性が良い一方、感染症・災害の訓練(シミュレーション)や、移乗・介助などの実技、合議で意思決定を行う委員会は、対面で行うのが基本です。
各研修ごとに、適した実施方法を以下の表にまとめました。
| 研修・活動の種類 | eラーニング(オンデマンド)適性 | 集合・双方向で残すべき部分 |
|---|---|---|
| 認知症介護基礎研修 | ◎(都道府県指定の標準化eラーニングあり) | 特になし |
| 虐待防止・身体拘束適正化の座学 | ◎(動画+確認テスト) | 自事業所事例の討議・委員会 |
| 感染症対策・BCPの周知(座学) | ◎ | 発生時対応の訓練(シミュレーション) |
| 移乗・介助などの介護技術 | 事前学習のみ◎ | 実技評価・OJT |
3-2. 内部研修と外部研修の記録管理
介護の研修には、自事業所で実施する内部研修(虐待防止・身体拘束適正化・感染症対策・BCPなど)と、都道府県が指定する外部研修(認知症介護基礎研修など)の2種類があります。
認知症介護基礎研修のように外部のeラーニングで受講・修了する研修について、事業所側が担うのは受講の手配と、修了した事実の記録管理です。
一方、内部研修は自事業所の基盤で配信・記録します。その際も、「外部研修の修了記録」と「内部研修の受講記録」の一元管理によって実地指導での提示がスムーズになります。
汎用的な知識は既製教材で、自事業所の指針や過去のヒヤリ・ハット事例は内製教材で行うという組み合わせも、同じシステムで無理なく運用できるでしょう。
4. 実地指導・監査に対応した受講記録を電子化する方法
法定研修のeラーニング化におけるポイントは、「オンラインにした部分」と「集合で行う部分」の両方を、同じ台帳で記録できるかどうかです。訓練や委員会の記録も含めて受講状況を一元管理できれば、実地指導時に「この研修はeラーニング、この訓練は集合」といった説明もスムーズになります。ここでは、受講記録の電子化について、やるべきことや注意点を解説します。
4-1. 実施記録・個人別受講記録の整備
介護の法定研修において残すべき記録を分解すると、大きく「実施記録」と「受講記録」の2層に分かれます。これに委員会議事録・指針・年間研修計画が紐づいてきます。
- 実施記録:研修名・目的・実施日・実施方法・内容(プログラム)・講師・使用資料・テストや課題の有無
- 受講記録:誰が・いつ・どの研修を受講し、修了したか(個人単位)
紙の出席簿では、実施記録は残っても個人ごとの受講記録と照合する作業に手間がかかり、未受講者の把握やフォローが遅れがちです。定められた保存年限はサービスや記録の根拠ごとに異なるものの、実務上は数年おきの運営指導のサイクルをまたいでも遡って提示できることが重要です。
たとえば受講状況をCSVで出力・集計できる管理機能があれば、「虐待防止研修・今年度/対象○名・受講○名・未受講○名」といった提出資料を、集計作業なしにそのまま用意することが可能です。
manabi+ schoolのCSV出力レポート機能については、CSV出力・レポートで活用する学習データ分析方法をご覧ください。
4-2. 「誰が・いつ・適切に受講したか」の担保
受講記録は、「受講済みフラグが立っている」だけでは不十分な場面があります。実地指導や監査で問われやすいのは「本当に本人が、流し見ではなく受講したのか」という記録の信頼性です。これを担保する要素として、視聴ログ(開始・完了・視聴時間)、本人確認、理解度テストの結果などを組み合わせて残す設計が有効です。
manabi+ schoolでは、顔認証・空間認知AI・視聴ログを組み合わせて本人受講を裏づけ、視聴完了+理解度テスト合格のように複合的な修了条件を設定し修了証を自動発行できる仕組みを備えています。条件を満たした受講者にのみ修了証を発行し、その履歴もログとして残せるため、「適切に受講した」ことの根拠がそのまま記録になります。
ただし、単に監視を厳しくすればよいわけではありません。過剰な監視は受講者の負担にもなります。LMSの認証機能や修了証の発行機能はあくまで「記録として何を残すか」であり、監視は記録の信頼性を担保する一手段と認識しておきましょう。
5. 多拠点・シフト・訪問・外国人材を止めないeラーニング運用設計

制度と記録の設計が固まっても、現場で回らなければ研修は完了しません。シフト・多拠点・訪問・外国人材という介護現場特有の制約を前提に、受講のハードルを下げる運用を設計する必要があります。
5-1. スマホ受講へのeラーニング対応でスキマ時間の活用
介護現場では、日勤・夜勤・訪問などの勤務形態があるため、全職員が同じ時間に集まれない前提があります。そのため、スマートフォンでスキマ時間に受講でき、中断しても続きから再開できることが受講率を大きく左右します。
例えば夜勤の合間や休憩中、訪問の移動時間でも受講を進められれば、研修のために出勤する負担をなくすことが可能です。短時間で区切ったマイクロラーニング形式にし、未受講者に自動でリマインドできる仕組みを構築することで、忙しい現場でも「配信漏れ」「受講し忘れ」を防げます。
5-2. 外国人介護職(EPA・技能実習・特定技能)の多言語対応
近年は、外国人職員に向けた研修の適正化も求められています。なぜならEPA介護福祉士・技能実習・特定技能で受け入れる外国人介護職が増えているからです。
認知症介護基礎研修や虐待防止・感染対策などの研修動画を日本語で配信したところで、「わかったつもり」の状態のまま修了してしまう可能性があります。その結果、利用者の安全に直結するリスクになりかねません。
そこで、易しい日本語や多言語での配信・字幕に対応した動画教材で研修を実施し、理解度テストの結果とあわせて記録に残せば、「多言語で配信し、本人が理解したうえで受講した」という証跡を残せます。
言語対応は”優しさ”ではなく、記録の信頼性を支える実務要件でもあります。manabi+ schoolは管理画面・教材・字幕の多言語対応により、受講者の母語に近い形で研修を届けられるのです。
なお、法定研修に限らず、言語の壁・教育の属人化・品質のばらつきといった外国人スタッフ教育全般の課題と、その具体的な解決策と成功のポイントは「外国人スタッフ教育にeラーニングSaaS導入」で整理しています。教育設計全体を見直したい場合はあわせてご覧ください。
6. 【介護事業者向け】eラーニングシステムの選び方チェックリスト
介護事業者がeラーニングシステムを選定する際には、「教材が豊富か」ではなく、「記録が残り、実地指導に耐え、多拠点・多様な人材で研修を回せるか」を軸にすることがポイントです。システム導入前に、次の項目を自事業所の要件と照らし合わせておきましょう。
| 項目 | チェックリスト |
|---|---|
| 記録 | 実施記録と個人別受講記録を自動で紐づけ、必要期間保管・CSV出力できるか |
| 実地指導対応 | 対象者・受講者・未受講者を提出できる形で出力・集計できるか |
| 受講の信頼性 | 視聴ログ・本人確認・理解度テストで、受講の事実を記録に残せるか |
| 修了管理 | 複合修了条件を設定した修了証で、適切に受講した根拠を残せるか |
| 現場運用 | スマホ受講・多言語・多拠点・シフト・訪問に対応できるか |
| 内製 | 自事業所の指針・事故事例・介助手順を教材化して配信・更新できるか |
| 規模 | 小規模な訪問事業所から数千人規模の法人まで、成長に合わせてスケールするか |
介護では、移乗・介助などの動作を伴う内容が多く、動画教材の作りやすさも重要な観点です。
manabi+ schoolは元々、資格学校向けの映像教材を制作する事業を行っていたこともあり、自社スタジオでの質の高い動画教材づくりを支援することが可能です。さらに、ノーコードでサイトや配信画面を組み替えられる自事業所仕様に作り込める仕組みがあれば、指針やマニュアルの改定に合わせて教材・研修フローを柔軟に更新できます。義務化研修の記録整備を自事業所でどう回すか具体的に検討したい方は、お気軽にお問い合わせください。
7. よくある質問(FAQ)
Q. 認知症介護基礎研修や虐待防止研修を、eラーニングで実施しても実地指導で問題ありませんか?
座学中心の研修はeラーニング形式で実施できます。認知症介護基礎研修は都道府県・指定機関のeラーニングで受講・修了するのが標準です。ただし、本人が受講した事実を記録として残せることが前提です。また、感染症・災害の訓練(シミュレーション)や介助の実技は集合研修の記録を残す必要があります。
※制度・取扱いは改正される可能性もあるため、最新の運営基準・通知や所管自治体の取扱いをご確認ください。
Q. 研修記録はどのくらいの期間、どんな形で保管すればよいですか?
保存年限はサービスや記録の根拠ごとに異なるため一律にはいえませんが、実務上は運営指導のサイクル(数年おき)をまたいでも遡って提示できることが安全といえます。そのため、実施記録と個人別の受講記録を紐づけ、委員会議事録・指針・年間研修計画も一体化しておきましょう。CSVなどで求められる単位で出力できる形に整えておくと、実地指導・監査への対応が容易になります。
8. まとめ|研修を「止めない・記録が残る」体制へ
介護保険法系の義務化研修(認知症介護基礎研修・虐待防止・身体拘束適正化・BCP・感染症対策)は、座学部分をeラーニングで実施できます。判断の分かれ目は「eラーニングにしてよいか」ではなく、「誰が・いつ・適切に受講したかという記録が、実地指導・運営指導に耐える形で残るか」です。
介護業界では、研修の未実施が運営基準減算に直結するからこそ、記録が要になります。座学はeラーニング、訓練・実技は集合と切り分けたうえで、ますは実施記録と受講記録をひとつの台帳に束ねましょう。
そのうえでCSV出力で提出できる形式を整えるところまで設計できれば、外部研修の修了記録も内部研修の受講記録も、同じシステムで管理・運用できます。
当社のmanabi+ schoolは、動画配信・理解度テスト・複合修了条件・修了証発行・受講ログのCSV出力・多言語配信・スマホ受講・顔認証といった、介護の義務化研修の記録整備と多拠点運用に必要な機能を備えたLMSです。
ノーコードで自事業所仕様に作り込めるFSE(Flex Site Engine)により、自事業所の指針や事故事例に沿った教材配信・運用にも対応します。シフト・多拠点・訪問・外国人材の現場で「研修を止めず、記録が残る」体制づくりを検討される際は、無料トライアルで自事業所での運用イメージをご確認ください。