生成AIでeラーニング教材を内製する 始め方・品質担保・著作権の注意点
「eラーニングの教材を、生成AIで作れるのか?研修担当者やスクール運営者から、いまよく寄せられる質問です。
結論から言えば、生成AIだけで完成させるのは難しいものの、eラーニング教材の構成案・台本・設問の「下書き」を高速化する道具としては有用です。
だからこそ設計すべきは、「AIに何を任せ、人が何を監修するか」というワークフローそのものです。
本記事では、外注や既製教材から「eラーニング教材の内製」へ切り替えたい教育担当者に向けて、生成AIを使った教材づくりの手順を、構成・台本→動画・字幕→設問 → 改訂という流れで進め方を解説します。あわせて、品質担保(ハルシネーション対策)や著作権の注意点、SaaS型eラーニングでの配信・運用までを一気通貫で整理します。

この記事でわかること
- 生成AIの役割は、構成案・台本・設問の下書きを高速化すること。人が監修する前提でのワークフロー設計が内製成功の分かれ目
- 構成・台本→動画・字幕→設問→改訂の4ステップで、各工程をAIの下書きと人のレビューをセットで回す、eラーニング教材の具体的な内製手順
- ハルシネーション対策として自社資料を根拠に人が裏取りする体制と、AI学習・類似性・著作権帰属という著作権の3つの注意点
1.なぜ今、eラーニング教材の内製×生成AIなのか
手順に入る前に、そもそもなぜ、「内製×生成AI」なのかを整理しておきましょう。
教材の外注や既製教材の購入には、限界があります。外注は1本あたりのコストが高く、少し直すだけでも追加費用と納期がかかります。既製教材は手軽な反面、内容が汎用的で、自社の業務フローや現場の事例には合わせきれません。
研修で一番価値があるのは、次のような「自社にしかない情報」です。こうした暗黙知は外部では作れません。
- ベテラン社員の判断基準
- 現場のトラブル事例
- 自社製品の扱い方
内製が広がらなかったのは、台本や設問作成に手間がかかりすぎたからです。ここに生成AIを加えると、下書きの時間が大きく圧縮され、「内製は割に合わない」前提が変わります。
ポイントは、AIを執筆者ではなく「速い下書き係」として位置づけ、専門性の担保と最終判断は人が握ることです。なお、生成AIを教育・研修全体でどう活かすかは、「教育・研修における生成AI活用」で整理しています。
2.生成AIで作れるeラーニング教材・作れないもの
内製を始める前に、生成AIに任せる範囲と人が必ず担うべき範囲を切り分けておきましょう。ここが曖昧なままAIに書かせると、後工程のレビューで手戻りが増えてしまいます。
| AIに任せやすい(下書き) | 人が担うべき(監修・判断) |
|---|---|
| 構成案・アウトラインのたたき台 | 専門的な正確性・最新性の確認 |
| ナレーション台本・字幕の下書き | 自社固有の事例・暗黙知の追加 |
| 確認テスト・演習問題の原案 | 誤りや不適切表現の最終チェック |
| 長い資料の要約・言い換え | 教材全体の責任と監修 |
つまり、生成AIが得意なのは「下書き」と「言い換え・要約」です。反対に、内容が正しいかどうかのチェックや自社ならではの具体例、そして最終的な責任は、AIには引き受けられません。この線引きを最初に決めれば、内製の質と作成スピードを両立できます。
3.AIでeラーニング教材を内製するワークフロー

ここからは、実際の制作手順を4つのステップに分けて見ていきます。各ステップで、AIの下書きと人のレビューをセットにするのが基本形です。
3-1.教材の構成・台本を生成する
最初のステップは構成づくりです。AIに丸投げするのではなく、「学習目標」(誰に・何ができるようになってほしいか)「想定時間」「前提知識」から逆算して具体的に指定したうえで、アウトラインのたたき台を出力させます。
ポイントは、社内マニュアルや議事録、既存の研修資料をAIに読み込ませ、それらを根拠にして台本を書かせる方法です。AIが自分の一般知識で埋めてしまうのを防ぎ、自社の実態に沿った下書きになります。出てきた台本は必ず人が読み、現場の事例や言い回しを足して仕上げましょう。
3-2.動画・ナレーション・字幕(SRT)
台本が固まったら、スライドと組み合わせて動画化します。ナレーションは自分で収録するほか、音声合成でAIに読み上げさせることもでき、 更新のたびに録り直す負担が減ります。字幕は音声認識でSRTファイルを自動生成し、人が固有名詞や専門用語を直せば、多くの受講環境に対応可能です。
できあがった動画は、LMS(学習管理システム)にアップロードして配信します。講座への登録や公開範囲の設定など、動画の配信・アップロード手順は別の記事で具体的に紹介しているので、実際に運用する段階ではあわせてご確認ください。
なお、manabi+はもともと資格スクール向けの映像制作を手がけてきた自社スタジオを出自に持ち、動画教材の作り込みを前提とした設計になっています。ナレーション収録や字幕の調整まで含めて制作を任せたい場合は、教材制作のサポートもご利用いただけます。
3-3.理解度テスト・演習の自動作問
教材ができたら、設問を用意します。台本や教材本文をAIに渡して作らせるポイントは以下のとおりです。
- 「この範囲から4択問題を5問」「実務で判断を問う応用問題を2問」といった形で作問させる
- 単なる暗記確認だけでなく、応用・判断を問う設問を混ぜるよう指示する
ただし、AIが生成した設問は正解と解説がずれることがあるため、必ず人が答え合わせしてください。さらに一歩進めて、受講者の学習履歴や弱点に合わせて出題を最適化したい場合は、履歴に連動した問題生成の設計まで踏み込むと、固定の問題集より学習効果が高まります。
3-4. レビューと改訂ループ
内製教材は、作って終わりではなく、公開後も改訂し続けます。 公開前には内容に詳しい担当者(SME/内容専門家)が事実確認を行い、公開後は受講データを見ながら改善します。
- 正答率が極端に低い設問 → 問題文か教材の説明を見直す
- 離脱の多い動画 → 尺を分割する、要点を先に出す
- 問い合わせの多い箇所 → 解説を補足する、FAQに追加する
こうした手直しの下書きは、AIに任せられます。設問の作り直しや解説の追記もAIがたたき台を出し、人はそれを直して決めるだけで済みます。「人が課題を見つけ、AIが直しの候補を出し、人が決める」というループを定着させれば、人による書き起こしの手間を省きながら、教材を継続的に磨き込めます。とくに、正答率が低い設問や離脱の多い動画をどう立て直すかは、「eラーニングが定着しない原因」 が参考になります。
4.AI教材の品質担保(ハルシネーション対策・監修体制)
生成AIをeラーニング教材の制作に使ううえで、最大のリスクがハルシネーション(AIが事実でない内容をもっともらしく書いてしまう現象)です。誤った業務知識の習得につながるため、資格講座や法令・コンプライアンス研修では特に留意すべきです。
具体的なハルシネーション対策は以下のとおりです。
- AIには、自社教材・一次資料を根拠として渡す
- 渡した根拠資料にない内容は「不明」と書かせる
- 数値・法令・固有名詞は人が出典で確認する
- 専門家によるダブルチェックの工程を必ず置く
受講者が使う学習支援AIを選ぶ場面でも同じことが言えます。教材だけを参照し推測で答えないAIの仕組みを、汎用ツールと比較しながら整理しておくと、AIの信頼性を見極めやすくなります。
5.AIで教材を作るときの著作権・情報の扱いの注意点
生成AIで教材を作るときは、著作権の扱いにも注意してください。
ここでは、文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が令和6年(2024年)3月に取りまとめた「AIと著作権に関する考え方について」(法的な拘束力はなく、公表時点での解釈を整理したもの。令和6年3月版が最新)をもとに、eラーニング教材の内製で押さえておきたい3つの論点を整理します。
※第30条の4は平成30年の著作権法改正で設けられて以降、本記事の執筆時点(2026年7月)まで条文の改正はありません。ただし今後改正の可能性があるため、判断に迷う場合は文化庁の資料など、一次情報で最新の内容を確認してください。
5-1.学習・下書きに他者の著作物を使うとき(AI学習と著作権)
1つ目は、学習・下書き段階で他者の著作物を利用するときです。
著作権法第30条の4によると、情報解析のように「表現を享受する目的ではない」利用は、原則として権利者の許諾なく行えます。
ただし、他社の教材をAIに読み込ませて内容をもとに文章を生成する使い方は、「表現を享受させる目的」が併存すると評価され、著作権者の許諾が必要になる場合があります。
そのため、読み込ませる素材は自社作成のものを基本とし、他社の教材を使う場合は、別途、許諾や引用の要件を確認してください。
5-2.AI生成物が既存の著作物に似てしまうとき(類似性・依拠性)
2つ目は、生成物が既存の著作物に似てしまうケースです。
文化庁の考え方では、AIで生成したものでも、既存著作物との「類似性」と「依拠性」が認められれば著作権侵害になり得るとされています。しかも、学習データに既存の著作物が含まれていた場合は、利用者がその作品を知らないくても、通常は依拠性があったと推認されると整理されています。
生成された文章や画像はそのまま使わず、人が確認・改変するようにしましょう。
5-3.作ったeラーニング教材の著作権は誰のものか
3つ目は、作った教材の権利です。
AIが自律的に生成しただけのものは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」に当たらず、原則として著作物として保護されないと整理されています。
判断の分かれ目は、「創作意図」と「創作的寄与」があるかどうかです。つまり、人が創作的な工夫を加えて、はじめて自社の著作物として扱えます。教材を会社の資産にしたいなら、この観点からも「人の手を入れる」工程が欠かせません。
著作権のどの論点に照らしても、できるだけ自社作成の文書や素材を土台にし、外部素材は利用条件を確認したうえで使うのが、実務上安全です。
6.作った教材をeラーニングSaaSで配信・運用する(FSE/premo)
教材が完成したら、受講者に届ける配信基盤と、学習を支える運用の仕組みが必要です。
manabi+は、ノーコードで学習ポータルを構築できるFSE(Flex Site Engine)を備えたSaaS型eラーニングで、専任のエンジニアがいなくても、自社ブランドに合わせた受講サイトを立ち上げられます。
また、教育特化型AIエージェントのpremoは、内製した教材の運用を後押しします。PDF教材や動画のSRT字幕を取り込み、解説はもちろん、受講者の履歴に応じた出題も行えるため、「作った教材」を「学び続けられる教材」へと引き上げられます。受講者が増えても運用品質を保つ具体策は、運営業務を自動化する方法で詳しく解説しています。教材の内製から配信・運用までを検討したい方は、お気軽にお問い合わせください。
Q.生成AIだけで教材は完成しますか?
完成しません。生成AIは構成案・台本・設問の「下書き」を高速化する道具です。正確性の確認や自社固有の事例の追加、最終的な監修は人が担いましょう。「AI下書き+人の監修」を前提にワークフローを組むのがおすすめです。
Q. AIが作った教材の著作権は自社のものになりますか?
文化庁は、「AIが自律的に生成しただけのものは、原則として著作物に当たらず、著作権法の保護を受けない」としています。人が創作・工夫を加えてはじめて自社の著作物として扱えます。教材を資産化したい場合は、人の手を入れる工程が不可欠です。
Q. 専門のエンジニアがいなくても内製・配信できますか?
可能です。下書きは生成AIに任せ、配信基盤はノーコードのFSEを使えば、専任エンジニアがいなくても運用を始められます。まずは小さな講座から試し、改訂ループを回しながら広げていくのがおすすめです。
7.まとめ
生成AIは、教材を丸ごと作る魔法ではなく、下書きを高速化する道具です。だからこそ内製の成否は、「AIに何を任せ、人が何を監修するか」というワークフロー設計で決まります。
構成・台本 → 動画・字幕 → 設問 → 改訂という流れを固定し、各ステップでAIの下書きと人のレビューをセットにする。そのうえでハルシネーション対策と著作権の勘所を押さえれば、外注や既製教材では得られない「自社ならではの教材」を継続的に生み出せます。
当社のmanabi+は、ノーコードで学習ポータルを構築できるSaaS型eラーニング「manabi+ school」と、教材制作から学習支援まで伴走する教育特化型AIエージェント「premo」で構成されたサービスです。教材の内製を始めたい方、生成AIを活用して制作と運用を効率化したい方は、ぜひ当社にご相談ください。